2006年06月16日

職業病

来る日も来る日も他人の英語を直す生活を送っていると、間違っている英語や明確ではない英語表現というものにものすごく敏感になってしまいます。
一種の職業病(occupational hazard)と言えるかもしれません。

これは何も100人100色シリーズに対する批判のように、日本人の書いた英語にのみ向けられるわけではありません。
ネイティブの間違いでも気になって仕方がないのです。しかも、出版物やニュースなど、ある程度権威のある媒体の間違いです。

例えば、この間見ていたCNNの特番。
キャスターの方が "could care less"(全く気にかける)というフレーズを口にするのを聞いた途端、「それは "couldn't care less"(全く気にかけない)の間違いでしょう」とツッコミを入れたくなってしまいました。(ちなみに内容は、パパラッチの写真を掲載する雑誌の場合、セレブへのアクセスが限定されても全然平気だ、というものでした)

あと、小説を読んでいてもミスプリ(typos)が異様に気になったりします。ハリーポッターの第三巻 "The Prisoner of Azkaban"のペーパーバック版で "with bated breath"(息を潜めて)が私が持っている版では "with baited breath"(息を釣られて)になっていることを発見し、びっくりしたことを覚えています。
(暇な人はチェックしてください。290ページのミスプリです)

これは何も私だけではないみたいです。同僚の中には「毎日 "The Wall Street Journal" で最低一つの間違えを見つけることを日課としてる」、と豪語している奇特な人もいます。

もっとも、今まで著者の英語力そのものに疑問を抱かせるような本はあまり読んだことがありませんでした。
Steve Berry 著の ""The Amber Room"" を読むまでは、です。

この本は本屋さんでの「ダン・ブラウンのファン必読!」というキャッチコピーに騙されて思わず買ってしまったのですが、完全に期待が外れてしまいました。
手の内を明かさないことで読者に期待感を抱かせる手法は確かにブラウンと同じなのですが、ダン・ブラウンの作品では最後で「なるほど!」と唸ってしまったのに対し、これは「はあ?」と拍子抜けてしまっただけでした。

それよりも問題なのが、著者の英語です。
まず、文法的に気付いたのは、この方はやたらと副詞(adverbs)を動詞(verbs)の前に置きたがるのですよね。

副詞は動詞の後に来るのが原則です。
e.g. "I quickly ran," ではなく"I ran quickly."

たまに諸々の理由でわざと副詞を動詞の前に配置することもありますが、これは例外に過ぎません。

なので、
"...she quickly discovered that she... insinctively possed the abilility...and she greatly enjoyed..."

のように副詞→動詞というコンビネーションが立て続けに並んでいるのを見たとき、ら抜き言葉の羅列を読まされたときのように眩暈さえしてきました。

また、この作家さんの場合、男性二人だけの会話であっても、たまに"" "his " "him" などの言葉がそれぞれ一体誰を指しているのか分からなくなってしまうことがあるのです。明確性(clarity)に欠けるのです。
Tom Wolfe は "I am Charlotte Simmons" にて丸々一ページ分続く文を書いていましたが、それでも読者として道に迷うことは決してなかったのとは大違いです。

いや、それどころか、たった二人の会話なのに、一体誰がその台詞をしゃべっているのかさえあやふやな場面があります。『ハリー・ポッター』シリーズでは一つの場面で6人以上の大人数で会話していても誰が話しているかが常に明らかであることを考えれば、本当に文章が下手である、としか言いようがありません。

買ってしまった私が言うのはおかしいかもしれませんが、どうしてこんな本がベストセラーになったのでしょうか?
posted by EnglishMaster at 00:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月13日

愛国心

サッカーには大して興味の無い私ですが、(野球派です!)ささやかな愛国心から今夜のオーストラリア戦を見るためにテレビをつけてみました。
しかし、全くの門外漢でも日本の戦い方が下手に見えて仕方がありませんでした。なぜオーストラリアゴールの前に誰も待機していないんだ!と叫びたくなってしまうことが何度も。後半、オーストラリアに追いつかれてからは見る気をすっかりなくしてしまい、チャンネルを変えてしまいました。

ところで、昨今話題を呼んでいるこの「愛国心」(patriotism)という言葉、皆さんはどんなイメージを持っておられますか?
いや、それよりも、これを学校で教える必要があると思いますか?

私は、これは学校で教えるものではない、と思います。
そればかりか、これを提唱している人々の筆頭に立っている小泉さんには本物の愛国心が欠けている、と思います。

このように考えるのに至ったのには、先月のレッスンでのある生徒さんの質問がきっかけでした。

ちょうどその日のレッスンの範囲に当たるテキストに "patriot" という言葉が出ていたため、その方に「この言葉の意味はご存知ですか?」と聞いたのです。
すると「自分の国を愛する人です」とすらすらと答えられたので、少し突っ込んだ話にも耐えられるだろうな、と思い、「では、あなたは patriot ですか?」と尋ねてみました。

(この質問はアメリカ人に向かっては絶対にするものではないと思います。なぜなら幼い頃から毎朝国旗に忠誠を誓っている彼らからすれば、「Patriot に決まっているだろう!」と怒り出す人が9割ぐらいでしょう)

その生徒さんは首を傾げながら「いや、違うと思います」と言ったのです。
「なぜですか?」と聞き返すと、「日本には色々と悪い面もあるから」と仰いました。
「いえ、良い面と悪い面を両方しっかりと見据えて、より良い方向に持って行きたいと思う人こそ愛国者だと思いますよ」と切り返すと、納得したような顔をされていました。
しかし、次の瞬間、いきなり、

"Do you think Prime Minister Koizumi is a patriot?" と聞いてきたのです。

この質問にはびっくりしてしまいましたが、一瞬考えた末、「違うと思います」と答えると、すかさず「なぜですか?」と聞いてきました。
内心、さすがだな、と感心しながら「小泉首相は靖国神社参拝によって大分国の対外的評価を貶めましたよね。そのような対外的評価を低めるような行為をする人は愛国者とは呼べないと思います」と意見を述べると、「僕も同感です」とのことでした。

その場で咄嗟に考えた説明にあっさり同意されて少々拍子抜けてしまったため、「では、歴代首相の中で、真の愛国者と言えるのは誰だと思いますか?」と質問を返すと、しばらく考えて「ミスター・ミヤザワは真の愛国者だと思います」と答えが返ってきました。これにも驚かされました。私も誰かを挙げろ、と言われたら真っ先に宮澤さんの名前を挙げただろう、と思ったからです。

実は私は4月の日経に掲載されていた宮澤さんの『私の履歴書』を読むまでは大して彼を評価していなかったのですが、あのコラムでは彼の世界の中での日本の立場を少しでも良くし、少しでも評価を高めよう、という姿勢がひしひしと伝わり、かなり感動したのです。
また以前、小泉さんの英語力で、「歴代の首相でただひとり
orthodoxな英語を話せるのは宮澤元首相だけです」というコメントを頂きましたが、なるほど、この人の英語力は本物だろう、とも思わされました。

大分話が逸れてしまいましたが、宮澤さんのようなある意味健全な人が持ち出す「愛国心」論ならまだしも、小泉首相や石原都知事のような自己中心的な考えの持ち主が担ぎ出した「愛国心」はロクなものではないような気がしてしまうのです。


健全な批判精神と国際感覚を有してこそ本物の愛国心の持ち主だと思うのですが、皆さんはどう思いますか?
posted by EnglishMaster at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月12日

ご報告

大分報告が遅れてしまいましたが、本年度受験した旧司法試験は択一の段階で玉砕してしまいました。

心温かい応援をいただいた方には、改めてお礼を申し上げます。

しばらく落ち込んでいましたが、ここではひとまず法律の勉強は忘れて、他のことに打ち込んでみたいと考えております。
妹が国際的な英語教育資格であるCELTAの取得コースをプラハで一緒に受けよう、と誘ってくれているので(一ヶ月間休暇を取らなければならないので、まだ上司のOKが取れていませんが)かなりこちらに心が傾いています。

また、通訳・翻訳稼業にももっと力を入れて行きたいな、と考えています。
実はこの方面ではささやかな夢があります。
日本のジョン・グリシャムを標榜している、中嶋博行先生の小説を英訳する権利を手に入れることです。まだ英訳は出ていないみたいなのですが、リーガル・サスペンスが大好きなアメリカでは絶対売れるような気がするのです。(個人的に好きだというのも大きいですが)

以上、大分とりとめのないものになってしまいましたが、簡単に報告とお礼とさせていただきます。
posted by EnglishMaster at 23:09| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月03日

Confident English skills とは?

またまた「100人100色」へのツッコミです。

なぜだか分からないのですが、ここの広告の英語は、首を傾げてみたくなってしまうような表現が満載されています。それも一つの狙いなのでしょうか?

さて、今朝仕事に行く途中に発見した今回のネタは

There are two things
you'll probably want to take on a trip abroad:
your passport and your confident English skills.

というものです。(原文の日本語の方は写し忘れてしまいました)

これはあくまでもセンスの問題かもしれませんが、私だったら多分"English skills" を形容するのに "confident" を使わないと思いますね。

ご存知の通り、"confident" とは「自信に満ちた」「自信ありげな」という意味があります。
「自信ありげな英語」(confident English)ならまだしも、「自信ありげな英語力」(confident English skills)はアリだと思いますか?
これはあくまでも日本語から訳した場合ですが、私にはなんとなく日本語の段階からして論理的に辻褄が合わないような気がしてなりません。(この一連の広告の特徴ですね)

"Confident" を使うのは "A confident English speaker" や "a confident teacher" のように何らかの形で「人」を形容する場合や、"a confident air" "a confident voice" など「人の属性」を形容するとき、あるいは "a confident stride" や "a confident answer" "a confident feelingなどのように所作や気持ちを表現するときに用いるのが一番自然であるような気がします。

あとは、重箱の隅をつつくようですが、このような状況において "a trip abroad" のように不定冠詞(indefinite article)を使う必然性が見出せません。「あらゆる海外旅行」という意味を持たせる "any trip abroad" や「あなたの行く海外旅行」を強調して "your trips abroad" という風に表現した方がスマートでナチュラルな感じになるのではないでしょうか。

というわけで、私であれば、以下のように書き換えます。

There are two things
you'll probably want with you when you travel abroad:
your passport and confidence in your English skills.



posted by EnglishMaster at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月23日

「良い発音」とは Part II

前回の「良い発音」についての考察は少し詰めが甘かったので、ここで具体的に何に注意すべきか、私なりの考えを述べておきたいと思います。

発音で重視すべきなのは、優先順位として
1. アクセント(単語単位の)
2. リズム(フレーズ、文単位の)
3. イントネーション
4. 子音の発音
5. 母音の発音
だと思います。

母音に至っては、最悪の場合、カタカナ発音のままになってしまっても他の4つさえできていれば9割は通じます。
むしろ、(特にイマイチよく分からない、と言う場合には)少々カタカナらしさを残してしまった方がイギリス英語らしく聞こえ、ネイティブから「格調高い」と褒められるかもしれません。

なぜ、このような順位をつけるに至ったかと言うと、答えは「渡辺謙」です。

彼は初のハリウッド映画となった『ラストサムライ』では本当に美しいジャパニーズ・イングリッシュを披露しました。
アカデミー賞にノミネートされたのにも、彼の英語が明らかにノン・ネイティブのものでありながら、「高貴な生まれの教養がある人」というイメージにぴったりのものであったと評価されたからだと思います。
ところが、その後出演した『バットマン・ビギンズ』や『さゆり』での彼の英語を聞いて、私はかなり失望してしまいました。個々の子音・母音の発音においては確実にネイティブに近づいているのにも拘らず、です。

そこで、ふと気付いたのが、彼の英語は『ラスト・サムライ』において最も単語単位でのアクセントの付け方やリズム感が優れており、ちゃんと意味を理解していることが伝わっていた、ということです。イントネーションもまずまずで、ウィットやユーモアさえ伝わってくる場面がありました。
それが、後続の二つのハリウッド映画では後退してしまっていたのです。(台詞がそれほど気の利いたものでなかったのも一因かもしれませんが)

考えてみれば、英語を英語らしく成さしめているのはアクセントの配置です。
"Constitution" も"con-sti-tu-tion" と最後から2音節目にアクセントをつければ英語になりますし、"con-sti-tu-tion" と最後の音節にアクセントがつけば(この場合、最後の音節の発音が「シオン」になる)フランス語になります。
(大学時代、これにいち早く気付いた私は、他の帰国子女のクラスメートのように「アメリカンを喋るな!」と先生に苛められずに済みました)

日本語も英語化されたときにはどこかしらアクセントがつきます。
例えば最近は日本食ブームであり、「枝豆」も英語化されていますが、「エダマメ」と言っても通用しません。"e-da-ma-me" と「マ」を強調する必要があるでしょうね。この話はすでに「シュワー」で述べた通りです。

なので、アクセントさえ意識できれば、「コーフィー」とカタカナ的に発音したとしても("f" と "h" では見るからに違うので、「コーヒー」とは言わない、という前提の上です)「コ」にしっかりとアクセントをつければ、通じる確率は10%から80%ぐらいに上がります。

逆にまったくメリハリが無かったり、アクセントの位置が間違っていたりすると、通じないか、下手すれば全く違う単語であると誤解されてしまいます。
例えば「キャリア」。最初の「キャ」にアクセントが付けば "carrier"、すなわちNTTDoCoMoのような「通信事業者」を、「リ」にアクセントが付けば "career"、つまり「仕事」を指すことになります。

次はフレーズや文の単位での強弱(リズム)でしょうね。
例えば "want to" というフレーズでは、"want"の方が圧倒的に強いです。その結果、"wan'to" と最初の "t" が脱落し、最遜的には "wanna" になったりします。
これを無視して、「ネイティブは "want to" を"wanna"と発音するんだ」と単純に考えていると、非常にだらしがなく・こえてしまいます。キーファー・サザーランドが『24』でスーツをびしっと着込んだ状態で "wanna" と言ってもきちんとキマルのは、やはり「ワ」がしっかりと強調されているからだと思います。
(もっとも、ビジネスの場では"wanna" と言うことは、個人的にあまりおすすめできないのですが)

話が少し逸れてしまいますが、シェークスピアの台詞の多くは、強弱の間隔を一定にした、いわば日本語での七五調に該当するようなリズムで書かれています。
そういった意味でも、英国の本家であるロイヤル・シェークスピア・カンパニーと「リア王」の道化の役(ちなみに台詞が多くて、物語の要となる役です)で競演した真田広之さんの英語を是非一度聞いてみたいと思いますね。
彼が『ラスト・サムライ』で渡辺謙さんにアドバイスしたとすれば、あのリズム感に納得が行きます。

ここまでがしっかりできていれば、ネイティブと同じスピードで話せるようになります。
そして話せる、ということは聞き取れる、ということにもつながります。

イントネーションはシャドーウィングである程度身につきますが、しっかりと文の意味と、その意図しているところ(例えば本気なのか、からかっているのか、驚いているのか、何かを強調したいのか)まで理解しないと上手くは行きません。
同じ『ラスト・サムライ』では原田眞人さんの英語がこの点で絶妙であると言えます。
イントネーションはフレージングと直接に関係しているため、これがしっかりできていればできているほど、長文の読解が得意であるような気がします。

最後に子音、母音ですが、乱暴な言い方をすれば、それぞれ「区別」さえできていれば結構ですし、母音に至ってはカタカナとその組み合わせでなんとか間に合ってしまいます。
これだけ必死にマスターしても、決してネイティブからは尊敬されませんし、あまり無理をすると私の同僚がよく言う「口にマシュマロを入れたまま喋っている状態」という、逆に非常に聞き取りにくい英語になってしまいます。

なお、発音がパーフェクトであればあるほど、文法の不備や話している内容の中身の無さが目立ってしまうということもありますので、ある意味注意が必要です。(これは "You've Got A Mail!" で指摘した通りです)

というわけで、まだ見ていない方には是非『ラスト・サムライ』をオススメします。
特にこの映画での原田眞人さんの英語は、目標にしても良いと思います。決してアメリカ人やイギリス人に間違われることはないと思いますが、非常に流暢で、ネイティブに「上手い!」と言わせる英語です。
渡辺謙さんの英語も、「最低ライン」を理解する上では非常に良い勉強になるのではないでしょうか。特別に耳が良くなくても余裕で目指すことができるレベルです。

ないものねだりをしても仕方がありません。
目標設定は現実的に。

lastsamurai.jpg

posted by EnglishMaster at 00:49| Comment(2) | TrackBack(1) | 発音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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