前回の「良い
発音」についての考察は少し詰めが甘かったので、ここで具体的に何に注意すべきか、私なりの考えを述べておきたいと思います。
発音で重視すべきなのは、優先順位として
1. アクセント(単語単位の)
2. リズム(フレーズ、文単位の)
3. イントネーション
4. 子音の発音
5. 母音の発音
だと思います。
母音に至っては、最悪の場合、カタカナ発音のままになってしまっても他の4つさえできていれば9割は通じます。
むしろ、(特にイマイチよく分からない、と言う場合には)少々カタカナらしさを残してしまった方がイギリス英語らしく聞こえ、ネイティブから「格調高い」と褒められるかもしれません。
なぜ、このような順位をつけるに至ったかと言うと、答えは「
渡辺謙」です。
彼は初のハリウッド映画となった
『ラストサムライ』では本当に美しい
ジャパニーズ・イングリッシュを披露しました。
アカデミー賞にノミネートされたのにも、彼の英語が明らかにノン・ネイティブのものでありながら、「高貴な生まれの教養がある人」というイメージにぴったりのものであったと評価されたからだと思います。
ところが、その後出演した『バットマン・ビギンズ』や『さゆり』での彼の英語を聞いて、私はかなり失望してしまいました。個々の子音・母音の発音においては確実にネイティブに近づいているのにも拘らず、です。
そこで、ふと気付いたのが、彼の英語は『ラスト・サムライ』において最も単語単位でのアクセントの付け方やリズム感が優れており、ちゃんと意味を理解していることが伝わっていた、ということです。イントネーションもまずまずで、ウィットやユーモアさえ伝わってくる場面がありました。
それが、後続の二つのハリウッド映画では後退してしまっていたのです。(台詞がそれほど気の利いたものでなかったのも一因かもしれませんが)
考えてみれば、英語を英語らしく成さしめているのはアクセントの配置です。
"
Constitution" も"con-sti-
tu-tion" と最後から2音節目にアクセントをつければ英語になりますし、"con-sti-tu-
tion" と最後の音節にアクセントがつけば(この場合、最後の音節の発音が「シオン」になる)フランス語になります。
(大学時代、これにいち早く気付いた私は、他の帰国子女のクラスメートのように「アメリカンを喋るな!」と先生に苛められずに済みました)
日本語も英語化されたときにはどこかしらアクセントがつきます。
例えば最近は日本食ブームであり、「枝豆」も英語化されていますが、「エダマメ」と言っても通用しません。"e-da-
ma-me" と「マ」を強調する必要があるでしょうね。この話はすでに
「シュワー」で述べた通りです。
なので、アクセントさえ意識できれば、「コーフィー」とカタカナ的に発音したとしても("f" と "h" では見るからに違うので、「
コーヒー」とは言わない、という前提の上です)「コ」にしっかりとアクセントをつければ、通じる確率は10%から80%ぐらいに上がります。
逆にまったく
メリハリが無かったり、アクセントの位置が間違っていたりすると、通じないか、下手すれば全く違う単語であると誤解されてしまいます。
例えば「キャリア」。最初の「キャ」にアクセントが付けば "
carrier"、すなわちNTTDoCoMoのような「通信事業者」を、「リ」にアクセントが付けば "
career"、つまり「仕事」を指すことになります。
次はフレーズや文の単位での強弱(リズム)でしょうね。
例えば "
want to" というフレーズでは、"
want"の方が圧倒的に強いです。その結果、"wan'to" と最初の "t" が脱落し、最遜的には "wanna" になったりします。
これを無視して、「ネイティブは "want to" を"wanna"と発音するんだ」と単純に考えていると、非常にだらしがなく・こえてしまいます。キーファー・サザーランドが『24』で
スーツをびしっと着込んだ状態で "wanna" と言ってもきちんとキマルのは、やはり「ワ」がしっかりと強調されているからだと思います。
(もっとも、
ビジネスの場では"wanna" と言うことは、個人的にあまりおすすめできないのですが)
話が少し逸れてしまいますが、シェークスピアの台詞の多くは、強弱の間隔を一定にした、いわば日本語での七五調に該当するようなリズムで書かれています。
そういった意味でも、英国の本家であるロイヤル・シェークスピア・
カンパニーと「リア王」の道化の役(ちなみに台詞が多くて、物語の要となる役です)で競演した
真田広之さんの英語を是非一度聞いてみたいと思いますね。
彼が『ラスト・サムライ』で渡辺謙さんにアドバイスしたとすれば、あのリズム感に納得が行きます。
ここまでがしっかりできていれば、ネイティブと同じスピードで話せるようになります。
そして話せる、ということは聞き取れる、ということにもつながります。
イントネーションはシャドーウィングである程度身につきますが、しっかりと文の意味と、その意図しているところ(例えば本気なのか、からかっているのか、驚いているのか、何かを強調したいのか)まで理解しないと上手くは行きません。
同じ『ラスト・サムライ』では原田眞人さんの英語がこの点で絶妙であると言えます。
イントネーションはフレージングと直接に関係しているため、これがしっかりできていればできているほど、長文の読解が得意であるような気がします。
最後に子音、母音ですが、乱暴な言い方をすれば、それぞれ「区別」さえできていれば結構ですし、母音に至ってはカタカナとその組み合わせでなんとか間に合ってしまいます。
これだけ必死に
マスターしても、決してネイティブからは尊敬されませんし、あまり無理をすると私の同僚がよく言う「口にマシュマロを入れたまま喋っている状態」という、逆に非常に聞き取りにくい英語になってしまいます。
なお、発音がパーフェクトであればあるほど、文法の不備や話している内容の中身の無さが目立ってしまうということもありますので、ある意味注意が必要です。(これは
"You've Got A Mail!" で指摘した通りです)
というわけで、まだ見ていない方には是非
『ラスト・サムライ』をオススメします。
特にこの映画での原田眞人さんの英語は、目標にしても良いと思います。決してアメリカ人やイギリス人に間違われることはないと思いますが、非常に流暢で、ネイティブに「上手い!」と言わせる英語です。
渡辺謙さんの英語も、「最低ライン」を理解する上では非常に良い勉強になるのではないでしょうか。特別に耳が良くなくても余裕で目指すことができるレベルです。
ないものねだりをしても仕方がありません。
目標設定は現実的に。