2005年11月23日

10 minutes out (字幕 其の四)

先週のブログで『24』の本編には原則として誤訳は無い、などと書いてしまいましたが、単にチェックしていなかっただけみたいです。

シーズンIIIの第20話(8:00−9:00)でまたまた発見しました。

テロリストの居場所を突き詰めて、ジャックがヘリコプターで現場に向かっているとき、車で向かっているもう一人の捜査官、チェイスに対し"Are you en route?" と尋ねます。
対するチェイスの答えは "I'm a little more than ten minutes out."
これが字幕では「10分ほど前に出ました」と表示されたので、思わず巻き戻して確認してしまいました。

"Out" はこのような用法ではある一定の地点からの距離を表します。
面白いことに、これは場合によってある場所からの距離か、ある場所の距離という全く別のものを表します。
例えば何もない砂漠のど真ん中の牧場で "The nearest school is 5 miles out." と言われれば「最寄の学校はここから5マイルのところにあります」となりますが、どこかに向かっているときに「あとどれぐらいで着くの?」と尋ねられて "I'm about 5 miles out." と答えれば「そこまであと5マイル残したところだ」ということになります。

テロリストのアジトに急行している状況においては、まさに後者の場合ですよね。なのでチェイスはここでそのアジトまで10分少々の距離にあること、すなわち「あと10分少しで着きます」と言おうとしていたはずです。「10分前に出た」と言った場合、意味が丸っきり逆になってしまいますよね。
事実、10分少々後の場面ではチェイスはちゃんと現場に着いていました。

誤訳とは言えなくとも、異議を申し立てたくなるような訳もありました。
21話における大統領の元夫人シェリーが大統領の政敵である上院議員のキーラー氏に "I have a high-value proposition for you." と言うシーンです。字幕では「重要な話」となっていましたが、"high-value proposition" とは「価値の高い提案」、言い換えれば「あなたにとってとても良い話」となるはずです。字数制限もあるでしょうが、もう少しこのニュアンスを出すこともできたのではないか、と思います。

あと、"a couple of hours" や "a couple of minutes" を「2時間」とか「3分」など勝手に(arbitrarily) 具体的な数字に置き換えてしまうのもいかがなものかと思います。確かに「数時間」としてしまえば "a couple of hours" の「2〜3時間」という範囲よりも長い時間を意味してしまう危険性がありますが、「2」とか「3」と決め付けてしまうとせっかくの元のフレーズの曖昧性が損なわれてしまうのではないでしょうか。
もっともこれは翻訳におけるトレードオフで何を重要視するかの問題なので、どちらの方が正しい、とも言い難いのですが。

実はDVDだと字幕をオフにしたり、英語字幕にすることができるため、ほとんど日本語字幕を見ていなかったのです。
しかし、映画館でいやおうなしに視界に入ってくる場合はまだしも、間違いを探すためだけに日本語字幕を見るのも考えてみるとちょっと問題ですよね。
以後は慎みたいと思います。
posted by EnglishMaster at 23:20| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
字幕は僕もいつも
同じような?を持ちながら眺めてます。
TradeOffになるのは確かに制限上からすると
いたしかたないかなとも。
問題は、翻訳者が物語をきちんと観てないで
その表現のみに固執する場合ですね。
全体の流れの中での表現なんですから。
24の場合は、全部観てないんじゃないですか(笑)。
Posted by 青不動 at 2005年11月24日 07:07
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