最初、語学学習関係の本が並んでいる三階にあるのかと思い、そちらに向かったのですが、三階においてあるのは日本語で書かれている教科書や参考書だけでした。
探していたのは英語だけで書かれたテキストでしたが、せっかくこんなにたくさんあるのだからちょっと見てみよう、と思い、いくつかの本に手を伸ばしてみました。
まず、結論から言うと、日本語で解説してあるテキストはなるべく使わない方が良いです。
理由は、例文に不自然なものがあまりにも多いからです。
一つだけ例を取り上げます。
日本語で解説してあり対訳が付いていた英会話の入門書みたいな本に、買い物をしている二人の女性の会話が載っていました。
「試着してみても良いですか」
などのありきたりな会話の最後で、片方の女性がドレスを試着した友達に向かって "That suits you!" と言っていました。
これが間違いである、とまでは言えませんが、少々不自然で、日本語の「それ、似合うよ!」を英訳したことが見え見えであることは確かです。
まず、第一に、この例文を書いた人は指示語 (this, that, these, those) の役割が分かっていません。
指示語は読んで字のごとく、対象を指し示すものです。
すなわち、指で指す必要がある場合や他と区別する必要がある場合ならいざしらず(例えば "I didn't really like the other dress, but that one suits you!")、一つしかドレスを試着していないのであれば代名詞 "it" で十分です。
なぜなら、"it" は抽象的なものではなく、具体的なものを示す代名詞であり、"it" を使った時点で対象が確定(ここでは "the dress" )しているからです。
なので、ここでは少なくとも "It suits you!" と言うべきでしょう。
さらに、「似合う」と相手を褒めるときに "suit" という動詞を使うべきか、ちょっと疑問に感じます。確かにもし、"It suits you!" を日本語に直すなら「それ、似合うよ!」になりますが、逆は必ずしも真ならず。"suit" がこのシチュエーションにおいて最も適切な表現であるとは言い難いのです。
"suit" は "suitable" (適切な)の語源になっている言葉です。英英辞典で調べるとこのような用法においては(to be appropriate, acceptable or satisfactory) と定義されています。つまり「適切」で「条件に適合」して、「満足の行く」という程度の意味しか持たないのです。
で、友達と買い物をして、「それ、似合うよ!」と褒める場合、決して「それなら適切だと思うよ」という生ぬるい (tepid; lukewarm) 意味で言っている訳ではありませんよね。
「似合うよ」という言葉の背後には「とても素敵だから買うべきだと思うよ」という積極的な感情があるはずです。
英語スピーカーならむしろ、「似合うよ」という代わりにこの背後にある感情をストレートに言葉にする傾向があります。
例えば
It looks great on you!
It's perfect! (ぴったりだよ)
It looks fantastic!
などが思いつきます。
土曜日に仕事の後オーストラリア人の同僚と買い物に行きましたが、私がデパートでふと目に留まったネックレスをつけたみたときの彼女の言葉は "It's gorgeous, and it looks really sexy. You have to buy it!" でした。そのネックレスはもちろん買ってしまったのですが、ここでもし "It suits you." としか言われなければ「なんだ、その程度か」と思って買わなかったかもしれません。
必ずしもこのように具体的にどこがおかしいかを指摘できるわけではなかったのですが、三階にあった日本語で書かれた英語・英会話の教科書に載っている例文は多かれ少なかれこのような不自然さを感じさせる傾向がありました。
なので、どうせ買うのであれば同店では五階の洋書コーナーにおいてある、英語だけで書かれた教科書や解説書(対訳付きもあります)の方がはるかに良いと思います。
具体的にどれがオススメであるかはまた次回に
