こういうものを見るのは結構好きです。特に日経の土曜版に挟み込まれている『日経プラス1』の「なるほど英語帳」というコーナーなどはタイムリーな表現を上手にまとめて紹介していますね。何か新しい表現を学ぶ、ということはまずありませんが、まとめ方や紹介の仕方に感心させられることが多々あります。
その一方で、たまにお粗末で間違いだらけの単語紹介もみかけます。
この間、購読しているメールマガジンの最後におまけとしてくっついている単語紹介のリンクをたどったら、どう考えても誤っているとしかいえない情報が堂々と掲載されていたため、唖然としてしまいました。
紹介されていた単語は "escarate"。問題を誰か上位の担当者に報告すること、という意味であると紹介されていました。
見るからに怪しい単語です。"Escalate" の間違いだろうと思いながらも、どこか知らない方言なのかもしれないという可能性を考えて Merriam-Webster 大英英辞典を引きました。案の定、結果は「該当エントリーなし。Escalate の間違い?」と帰ってきました。念のために Google しても、分かったのは Escarate がヒスパニック系の苗字にはよくあるらしいことぐらいですね。
しかし、仮にそのコラムの筆者が "escalate" と書くつもりであったとしても、"escalate" には誰かに報告するという意味はありません。"escalate" はエスカレーター (escalator ) から派生した言葉なので、基本的なイメージとしては「ひとりでに勝手に上がっていく」という感じになります。
I could see his temper escalating. (彼の機嫌がどんどん悪くなっていくのが目に見えて分かった)
The costs required for rebuilding escalated after the second hurricane swept through the area.(二つ目のハリケーンが街を吹きぬけた結果、再建にかかる費用は急上昇した)
よく見るとそのサイト、冠詞や前置詞、果てには動詞の使い方までかなり酷い間違いが目立ちました。
そしてさらに始末が悪いことに "wanna" とか "Oh, God" のような口語的な (colloquial) 表現を随所にちりばめているため、一見「もっともらしく」見えます。
大手検索サイトのサービスの一環として提供されているため、たくさんの人に読まれているだろうと考えると同業者として恥ずかしい限りです。
では、「上位担当者に報告する」はどう表現するのでしょうか。
簡単です。"To report" を使えば良いのです。外来語としての「レポート」はもっぱら「報告書」という意味の名詞として使われていますが、もとは「報告する」という動詞です。
実はこれ、とても柔軟で便利な言葉なんです。
例えば、「〜について報告する」であれば、他動詞として使います。
e.g. report the problem, report the trial, report the situation
一方、同じ他動詞的な用法でも直接目的語に人を持ってくると、「〜の不始末について報告する」というネガティブな意味に一変します。
A: This is the third time this week that Jim's been late for work.
B: You really should report him to the manager.
A: Yes, but I don't want to get him fired.
さらに便利なのは自動詞として使った場合の "report to" という表現。これは場面にもよりますが、報告する範囲を限定しないため「〜が上司です」という意味で非常によく使われます。
I report directly to the President. (私は社長の直属の部下です)
Who will I be reporting to? ([新しい仕事において]私の直属の上司は誰になるのでしょうか)
【関連する記事】
自動詞の「report to」、意外な意味があるんですね〜、なるほど。
日本語もそうなんでしょうけど、英語にもいくつもの意味や用法があるのにはいつも泣かされてます。しかし面白い。
それにしても間違い探しの分野ではホントにエキスパートですね、字幕の間違い探しは趣味でもあるみたいですが、ん〜、さすがです。
『雑記』も、ぽいなっ、と思いながら読みました!
最後に、私の知り合いのそのまた知り合いのブログ、宣伝してと言われているんで紹介します。↓
http://plaza.rakuten.co.jp/yumeobatyan/
筆者は多趣味な方ですが、顔文字パラダイス状態です。お時間あったら見てみてくださいませ。
I hope I'll be able to see you on Sat. at Yurakucho school!(←私はまさに転校生の気分ですよ、ドキドキ…)
そう、書き始めるとなかなかまとまらないのが悩みの種ですね。Brevity is the soul of wit; もっと簡潔にまとめられるように文章力を磨かなければと実感する毎日です。
I hope to see you on Saturday too!