2007年01月20日

レベル1の威力

今のスクールで教え始めて4年強、同じ教材を何百回、何千回と教えています。
中上級の新教材は一昨年導入されたものですが、初級の教材は私が入社したときに使い始めたものであるため、もうほとんど暗記してしまっています。

同僚が時々「現在完了進行形を扱う単元は何?」や「レベル2の第10章のトピックスは?」と聞いてきますが、そのときいつも即座に答えられるため「お前、もっとマシなことに頭を使えよ」と呆れられてしまっているほどです。

(生徒さんがある構文で躓いてしまったとき、「それはレベル3の第一章を見て復習すれば良いよ」などと指摘できるのは便利ですが)

でも、そんな状況でも、未だに新鮮な発見があったりします。

数週間前、道順をテーマにしたレベル1のレッスンを教えていたときのことです。

CDを聞いて、テキスト上に書かれている指示を順番通りに入れ替える、という内容のことをやっていたのですが、より実用性を持たせるために、最近は、聞いた内容を基に簡単な地図を書く、というアクティビティーも加えています。

で、その生徒さんに「地図を描いてください」と言ったところ、頭を捻りながら一応描けたのですが、大事な情報が抜けていました。

「"Turn right at the third light," とあったので、曲がる前のこの通りに信号が必要ですね」と言いながら、信号を書き込んであげたときです。
「"Turn right at the third light," で、"At the third light, turn right," では無いのですね?それとも両方使えるのですか?」と質問が来たのです。
(その方ははじめてのレッスンで、レッスンの冒頭で「コミュニケーションが成り立つには質問に答えるだけではダメです。ですから、どんどん質問をしてください。そのための訓練もします」と言ったのが効いていたのかもしれません)

実は、以前にこれをやってもらったときも、曲がった後の通りに信号を書き込んだ人がいて、なぜだろう、と思ったのですが、この質問を聞いてはじめて納得しました。
日本語では「三つ目の信号で右折」であるため、「右折、三つ目の信号で」という順番で情報を与えられると混乱してしまっていたのです。

そこで、これは英語の本質に触れてもらう良い機会だ、と考え「確かに"At the third light, turn right," という言い方もありますが、"Turn right at the third light," の方が原則です。なぜなら、英語では常にアクションの方が先に来るからです。"At the third light" は付随情報に過ぎないでしょう?だから後回しになるのです」と説明しました。

その生徒さんはしきりに感心していましたが、私は逆に疑問を感じてしまいました。なぜ、このような質問をせずに、すらすらと地図を描けてしまう生徒もいるのだろうか、というものです。

そのときに気付いたのが、すらすらと地図を描ける人のほとんどがレベル1の冒頭から始めており、動詞が先に来る、という原則をいやと言うほどすでに叩き込まれている、ということだったのです。
(質問をした生徒さんはたまたま、少し基礎があるということでレベル1の中盤から始めた方でした)

例えば、
「コンピュータは机の上にあります」は "The computer is on the desk,"
「私は今日、メガネをかけていません」だったら "I'm not wearing glasses today," になり、いずれも日本語とは全く語順が異なりますが、これはいずれも道順が出てくる第7章以前にやる構文です。このような内容の文をパッと作文できるレベルにあれば、"Turn right at the third light," と言われても全然混乱せずに済むのでしょう。
そして、第一章からスパルタ式にしごかれている生徒さんは(これはちょっと大げさかもしれませんが)実際にこれぐらいの文であればスラスラと口から出てくるのです。

これを考えると、レベル1と言えど決して侮れないな、と思います。
基本的な語順(動詞が先に来ることや、「コーヒー五杯」が "five cups of coffee" になることなど)が一通りカバーされているし、日本語ではほとんど同じような文である「彼女は背が高い」と「彼女は脚が長い」が英語では全く違う動詞を使わなければならないことにも慣れます。"I'd like a chicken," と "I'd like some chicken," の違いを通じて可算名詞・不可算名詞の違いにも触れますし、また現在形・現在進行形・過去形・過去進行形の4つに限られているとしても、きちんと時制を使い分けるように訓練されます。

つまり、いわゆる「英語らしさ」を構成する要素の大部分に触れる機会があるのです。

この時点において強固な土台ができており、この範囲においてだけでも「英語で考えて、話す」ということができれば、とりあえずのコミュニケーションには困りませんし、もっと難しいレベルに上がってからも苦労しません。(なんせ、レベル1と言えどもブロークンな英語は許されず、必ずフル・センテンスで話すことが求められますから)
またカバーする内容が限られている分、教える側としては冠詞や前置詞のような細かい点までチェックすることができます。

家を建てるときに基礎工事がしっかりしていれば大地震があっても大丈夫であるのと同じように、語学も基礎にこそ一番時間をかけなければならないと思います。
レベル3あたりになって躓いてペースダウンしてしまっている人は、レベル1程度の質問を英語のまま理解し、答える、ということができていない人ばかりです。

だから、レベル1は簡単だから、と決して馬鹿にはしないように。
実はものすごく奥が深いのです。
posted by EnglishMaster at 22:32| Comment(1) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
structureはフルセンテンスで話すからには、絶対的に欠かせない要素ですよね。英語と日本語は全く逆ですから、まずはアクションを先にもってくる、という原則を徹底的に意識して、ひたすらに文章を構成する練習に取り組みたいですね。

基礎がどれだけ大事か。それは英語力ゼロからスタートした僕には身に染みてわかります。

生徒の皆さんは先生に鍛えられて、幸せです。
Posted by ニコ at 2007年01月24日 23:08
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