2006年10月15日

SとVの言語

今日の夕食は脂がたっぷりとのった秋刀魚でした。

「秋はやっぱり秋刀魚だ」と思いません?

でも、この一文を英語に直そうと思った途端、途方に暮れてしまいました。主語も動詞もないからです。(ここで「秋」は主語ではなく、主題であるとみなしているため)

日本語にはそういう文が多い、ということに新たに気付かされたのは、Wikipediaで以下の記事を発見したときです。
Topic-prominent language
(日本語版もあります)
主題優勢言語

この記事を読んで、はじめて「は」の前の言葉が必ずしも英語的な意味での「主語」であるとは限らない(少なくともそう解釈する説がある)ことを知り、ショックでした。

と同時に、日ごろ耳にするちょっと不自然な英語の諸悪の根源はこれか、と目から鱗でしたね。

たとえば、厳密には

「私は美しい」(主語とみなせる)→ I am beautiful.
「私はビールだ」(話題語に過ぎない)→ As for me, [I'll have] beer.
(cf. I am beer, は英語では論理的に不可能)

つまり日本語は基本的に主題と述語の関係にあり、二つ目の文のように英語でいうSもVもなくても余裕で文を作れてしまうのです。
だから日本語で考えた内容をそのまま英語に直しても、ぎこちない文章になってしまうことが多いのでしょう。日本語の文の主語(もしくは主題)をそのまま英文の主語にしても、一文目のように上手くいくこともあれば、二文目のように必ずしも上手く行かないこともあるのはそのためです。

実は、これを考えると、『レストランは食べられる?』の項目で「あのレストランは美味しい」や「仕事が忙しい」の非論理性を糾弾したのは間違いだったのかもしれません。日本語の構造としては全然おかしくないのですから。
どうやら私は英語的基準を日本語に無理矢理当てはめてしまっていたみたいです。反省しています。


何はともあれ、やっぱり英作文をするなら、まっさらな状態で主語を何にするか、そして動詞を何にするかから考えなければなりません。
翻訳作業を中心とする勉強法に改めて限界を感じる今日この頃です。
posted by EnglishMaster at 23:45| Comment(3) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。ぽんきちです。
EnglishMasateさんが「は」を主語に対して使われる格助詞と思っておられたとは意外でした。日本語の世界では『象は鼻が長い』『「は」と「が」』という名著もあり、この問題については既にある程度の研究がすすんでいます。初心者なら本多勝一の『日本語作文の技術』も読みやすいかもしれないです(ここに簡単にまとめてあります)。こういうのをお読みになられるとよく分かりますが、日本語の「は」の中には少なからず「話題提示」的な用法があるのですね。つまり「秋はやっぱり秋刀魚だ」なら、「秋(についての話をしますとね)」の「は」なんです。「が」は反面述部との密接が強いですから、いわゆる「主語」を受ける助詞と言えると思います。私も決して日本語教育が専門なわけではないですので、あまり専門的に正しい書き方ではなかったかもしれませんが、参考までに。
Posted by ぽんきち at 2006年10月18日 12:41
ご無沙汰しております。北京から帰ってきました。耳が飛行機でやられ、おかしいです。

翻訳とは大変奥が深く難しいですね。一流のレベルでこのお仕事をされている方々に改めて敬意を表します。

先生のこれまでのブログで書いてきたことは本にすることもできる程ですよ。検討されてはいかがですか。
Posted by ニコ at 2006年10月19日 10:16
突然のメールすみません。
掲示板を拝見し、このブログにたどり着きました。
しかも、コメントではないのですが、どこに書いたらいいのか分からないのでここで失礼します。
ちょっと質問させてください。

暇を持て余していたりして、
「かまって〜〜ヾ(≧▽≦)ノ」
という場合、英語でなんと言えば適切ですか?
また、同じ意味で「からんで〜」だとどうなりますか?

よろしければメールくださると助かります。

Posted by みぃ at 2006年10月20日 17:02
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