2006年04月24日

使役色々

ついでに広告ネタをもう一つ。
最近文法についてほとんど書いていなかったのですが、格好の題材があったので、これも賞味期限が切れてしまう前に、と思ったのです。

また『100人、100色』シリーズからの出典です。

春は英会話も、パッと咲かせたいね。

It's spring---don't you want to make your English skills burst into bloom?


これを見てあれ?と思わなかったのであれば、危険信号です。
おそらくこの英文の作成者同様、使役=make、となんの疑問も無く考えていたのでしょう。

しかし、それでは誤解を招く、あるいは相手に不快な思いをさせる危険さえ孕んでいます。

とりあえず、make を使った例文をいくつか紹介しましょう。

My mother made me practice the piano for two hours yesterday.
(母は昨日、[嫌がる]私にピアノを二時間も練習させた)
My boss wasn't satisfied with the report---he made me rewrite it twice!
(報告書に不満を示した上司は、[そんなことに意味を見出せない]私にそれを二度も書き直させたんだよ!)
I made myself study for another hour before going to bed.
(私は[もうやりたくなかったが]寝る前にもう一時間勉強することを自分に課した)

ここで、気付いて欲しいのは、以上の三つの例ではいずれも「母」、「上司」、「私」など、「私」に対する「強制力」を持っている人たちが主語になっていることです。
[]で補充したのは、"make s.o. do s.t." を使うことによって想像されるニュアンスですが、いずれの例でも"make" をより強い「無理やり」を意味する使役 ("force s.o. to do s.t.") に代替可能であり、そうすると「嫌々ながら」というニュアンスが前面に出てきます。
I forced myself to study, のように。

なので、間違っても「三日以内に、秘書に連絡をさせます」と言うつもりで "I will make my secretary contact you within three days," などと言ってはいけません。
そのような台詞を聞いた相手は「こいつはなんて傲慢で嫌な奴なんだろう」と思ってしまいます。
同じ使役でも "I will have my secretary contact you," (秘書に[頼んで]連絡させます)の方がはるかに穏やかで好印象ですね。

さて、"make" は必ず強制力を伴うか、というと、必ずしもそうではありません。
以下のような例もあります。

Can't you make the car go faster?
(この車、もっとスピードを出せないの?)
What's my type? Well, of course I want someone who can make me laugh!
(好みのタイプ?うーん、もちろん笑わせてくれる人が良いな)

最初の例では客体が車なので、何かを強制する、というのはおかしいですよね。
また、二番目の例でも決して「強制的に」笑わせてくれる人を好みのタイプとして挙げているわけではありません。(当然ですが)

ただ、両者に共通して言えることは、客体が主語の思いのままになる、という点です。
アクセルを踏めば車は(限界はあるものの)スピードアップします。また、冗談が上手い、もしくはぴったりと波長が合っている相手なら、こちらが笑うつもりがなくても(これが重要なポイント!)笑ってしまいます。

つまり、"make" を使うことは、究極的には客体の主体性を無視して、主語の意のままに操ることを意味するのです。

The movie was so sad, it made me cry.

でも、客体「私」の主体性は押し殺されています。あまりにも悲しい話だったため、泣かざるを得なかった、と言いたいのですから。

大分回り道(detour)をしてしまいましたが、最初の「英語力を咲かせる」に戻りましょう。

以上を総合して考えると、植物に "make" を使うのはおかしいですよね。植物を意のままに操ることは不可能なのですから。桜を例年より早く咲かせようと思っても、まったく無駄です。

なので、「咲く」という動詞を使う場合は、原則として"make" は使えません。
唯一の例外は、魔法を使えるときでしょうか。

She made the flowers burst into bloom with a wave of her wand.
(彼女は杖を一振りして花をパッと咲かせた)

のように。(まるでハリー・ポッターの世界ですが)

また、英語力の向上も残念ながら意のままにはなりませんよね?そういった意味では「咲かせる」とは非常に的を得た言葉だと思います。

では、意のままにならない相手に対してはどうするのか。なんとか思う通りの結果を出すように「仕向ける」しかありません。この場合には "get s.o. to do s.t." を使うのが一番です。

I don't know how she manages to get the orchids to bloom year after year.
(彼女は一体どうやって蘭を毎年のように咲かせているのだろう)

冒頭の広告の英語をもっと適切な表現に変えるのなら
Don't you want to get your English skills to blossom?
などが良いかもしれません。

ちなみに、
Do I make my students do their homework?
ですって?

いえいえ、相手は大人ですから、あくまでも自主性を尊重し、
I try to get them to do their homework,
に過ぎません (^^;
posted by EnglishMaster at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 文法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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