2006年04月16日

小学校英語必修化の是非

昨日の夕刊だったか、小学校で英語が必修になることをにらんで子供向け英会話教室が人気であり、受け入れの低年齢化も進んでいるという記事がありました。

これを見て仰天してしまいましたね。

そもそも英語必修化というのは英語に触れる機会を学校側という場で提供することにより、あせって子供を英会話教室に通わせる親を牽制する意味もあるのかな、と思ったからです。

でも実態は全く逆ですね。
中教審が英語必修化を掲げることによって、なるべく低年齢で英語を勉強しておくことが大事なんだ!という認識が暴走しつつあるように見えます。

子供に早い時期から英語を習わせることの意義はさておき、今提案されている小学校で英語を必修化する、という動きには少なくとも二つの問題がある、と私は考えます。

第一には、時間が中途半端であること。

たしか、一週間に一回、一時間ぐらい、ということだったと思うのですが(間違っていたらごめんなさい)この時間で一体何ができるというのでしょう。
せっかく何か勉強しても次の週までにはほとんど忘れてしまう、という程度のものになってしまうと思います。

それなら、その分の時間を国語に回して、母国語の基盤を強化するために用いた方が、中学校にあがってからの英語学習にはるかに役に立ちます。
最終的に目指すレベルにもよりますが、原則として外国語で到達できる最高レベルは母国語での言語能力に大きく左右される、と考えるべきです。

これは経験上言えることです。
上達が目覚しい人は、ああ、この人は多分国語力もあるんだろうな、と思います。同僚でも同じ意見の人がいて、すごく苦労されている生徒さんを見ると、彼は決まって「そもそも日本語力がそれほど高くないのだろうね」と言います。
妹が教えている私立中学(今は彼女は高校の方に移りました)でも帰国子女用のクラスがあるみたいですが、彼女曰く、「帰国子女の子よりも中学校で英語の勉強を始めた子の方が上達がはるかに速いよ。テストの点数に限らず、文章力に関しても半年から一年ぐらいで追い抜いているね。帰国子女は発音がきれいなだけだ、と馬鹿にされてしまう傾向さえあるの。やっぱり日本語の基礎が違うからじゃないかしら」

それこそ毎日4時間ぐらい勉強して英語を日本語に変わる「言語能力の基軸」に育て上げるならまた別な話ですが、あまり現実的な話ではありませんよね。
内容にもよりますが、一週間に一時間しかできないならやらない方が良いと思います。

そこで、第二の問題点です。
内容は一体どんなものになるのでしょうか。

朝日新聞の記事によると、現在小学校(6年生)で行われている英語教育の種類で一番多いのは@「歌やゲームなど英語に親しむ活動」(97.1%)、Aかんたんなあいさつや自己紹介などの英会話(94.8%)、B英語の発音の練習(73%)、C文字に触れる活動(43%)となっています。

あと、これは周りから聞いた話などに基づいた推測に過ぎないのですが、少なくとも@、A、Bに関してはネイティブ・スピーカーの先生にこだわっているのでしょうね。

そして、これも伝え聞いた話なのですが、あまり歌やゲームばかりやると、子供には「英語=遊び」という回路ができあがってまじめに取り組まなくなるおそれがあるみたいです。
また、あまりネイティブ起用に躍起になると、「英語=外国人のもの」という、日本人の会話能力に一番支障を来している(と私は考えている)「外人信仰」を早い時期から強化することになってしまうのではないでしょうか。

これでは全くダメです。
もし小学校で英語を教える意義があるとすれば、あくまでも中学校以降での英語学習の土台を作ることに他なりません。

実は外来語という形で我々の身の回りにはすでに英語が溢れています。本当は英語はすでに身近なものであり、決して未知の、外見が自分とは違う「外国人」が喋るものに限られているのではない、と認識することが重要なのです。

そこで提案なのですが、アルファベットと個々の文字の基本的な発音を勉強した上で、外来語研究に取り組む、というのはどうでしょう。
例えば、"first" と "fast" はカタカナだと全く同じ「ファースト」になってしまいますが、見た目からして全然違いますよね。(この問題は以前『カタカナ語』で取り上げました)
そこで、「見た目は違うのに、発音が同じで良いのか?良いはずがない」という認識を持ってもらうだけで中学以降の勉強に大いに役に立つはずです。

外来語を英語での綴りと正しい発音に結び付けておけば、少なくとも100単語ぐらいの語彙を身につけておくことができますし、何よりも英語は本当に身近なもので怖くないんだ、と考えられるようになるのではないでしょうか。

ついでに同じ外来語でも英語以外の言語から由来しているものもある、ということも勉強しておけると良いかもしれませんね。例えばパン(pain)、シュークリーム(chou à la crème)、アンケート(enquête)はフランス語、アルバイト(arbeit)はドイツ語から来ている、という風に。
社会人でも知らないで英語と混同して使っている方が多いので、これは本格的に勉強する前から知っておいた方が絶対得だと思います。

と頑張って書いてはみたものの、このようなアイデアが文部科学省に採用される可能性なんてゼロ以下ですよね、絶対。(^^;
posted by EnglishMaster at 23:47| Comment(3) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おひさびさです(^_-)-☆
文科省のバカぶりは
税金泥棒以前の問題ですが(笑)
どこの国でも、自国の言葉を疎かにして
外国語教育に力を入れるというのは
本末転倒ですね。
敬語も正確に使えない日本人ほど
情けないものはありません。
Posted by 青不動 at 2006年04月20日 14:09
青不動様、久しぶりのコメント、ありがとうございます!

でも耳に痛いお言葉を (^^;
私自身、敬語の使い方は正確にほど遠いような気がしてしまいますね。
仕事でメールを書くときなど、ときどきものすごく不安になってしまうことがあります。
英語だと自信を持って最上級の丁寧語を使えるのですが...これは日本人失格?!
Posted by EnglishMaster at 2006年04月24日 01:39
初めてコメントします。「そこで提案なのですが、アルファベットと個々の文字の基本的な発音を勉強した上で、外来語研究に取り組む、というのはどうでしょう。」というコメントは大変良いと思います。それの実現にはフォニックス(Phonics)の導入でしょうが、30数年前からこれが日本に普及する事を期待していたのにまだまだですね。日本は教育への対応が遅い!まさしく文科省に問題ありです。
Posted by Ranchan at 2007年07月09日 17:18
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