数日前、メイク落としの儀式(私はクレンジング料を顔になじませ、テレビを見ながら20分ほどマッサージするのが好きなのです)のお供のためにケーブルテレビ上で『マイ・ネーム・イズ・アール』を見ていたときのこと。
画面上では大学の男子学生寮(厳密には fraternity house)で、ブラウニーを食べている二人の男子学生の間にこんな会話が交わされていました。
"Is it hitting you yet?"
"No, not yet."
どうやら、そのブラウニーにはマリファナが入っていて、それが「効いているのか?」「いや、まだだ」という内容である、と検討が付いたのですが、なんと字幕は、
「殴られているのか」
「いや、まだだ」
のような内容だったのです。(録画していなかったため、確認することができず、少し記憶が曖昧かもしれません)
なんか、場面にそぐわないな、と考えていたところ、ハチに刺された主人公が唇と耳を真っ赤に腫れ上がらせた状態でその部屋にやってきたのです。
ドアを開けてその哀れな彼を見たブラウニー一号は、
"Oh, yeah, it's hitting me."
みたいなことを言い、バタンとドアを閉めてしまいました。
つまり、「ついにマリファナが効き始めて、これは幻覚に違いないから無視してしまえ」ということだったのでしょう。
でも字幕は相変わらず、
「ああ、殴られたよ」
でバタンとドアを閉める、という事の流れになってしまっていました。
これはニュアンスがどうのこうの、という次元ではないですね。明らかに画面上で起こっている出来事と食い違っているのですから。
字幕製作者にはブラウニーの持つ意味が良く理解できなかったのでしょうか。
(とはいえ、私自身、幸か不幸かこの麻薬入りのブラウニーを食べたわけではなく、一体どこでこの知識を仕入れたのかが思い出せないのです)
ところで、この "hit" という動詞、考えてみると結構曲者です。
大分前に紹介した、"check" に勝らずとも劣らぬほど、多様な意味で用いられていますね。
先週、ある上級レベルの生徒さんを教えていたときに、テキストに
"now on the anti-globalization movement's hit list" という面白い表現があったのですが、その方はこの表現を理解するのに少し苦労してしまいました。これは "hit chart" のことなのか、と。
(ちなみに "hit list" とは、"hit" が「殺す」という意味で用いられることから転じた「抹殺対象者のリスト」を意味するものであり、前述の表現は「反グローバリゼーション運動に狙われることになった」のようなニュアンスになります)
さて、少々マニアックな域に入り込んでいきますが、"check" のときに習って動詞での使い方を挙げていくと、まず、
1. 殴る I hit the desk out of frustration.
2. 打つ I hit the ball out of the park.
3.当たる Four out of the five arrows hit the target.
4. ぶつかる A car hit me as I was coming across the intersection!
5. ぶつける I hit a car with my bike the other day.
6. 襲う The tsunami hit the bay at around 5 a.m. / The robbers hit the bank at exactly 2 p.m.
7. 効く The beer really hit the spot!
8. [ hit the books というフレーズとして] 勉強する I guess I should go home and hit the books now if I want to pass the biology exam tomorrow.
9. 殺す
などが思いつきます。
他にもあったはずだと思い、愛用の英英大辞典を見たら...
まだ触れていない定義が10以上残っていることに気付き、とても今晩中にこの記事を仕上げるのは無理だということを思い知らされました。
申し訳ありません。
ということで、続きはまた後日に。


