2006年11月18日

英語はなぜ英語で勉強すべきか

今日、ある中級のレッスンでリスニングをやっていたときのことです。

食事は美味しかったけど、ものすごく混んでいて手際が悪かった新しくオープンしたレストランについて、そこに行った女性が友人に向かって

"I don't think they were expecting to become so popular so fast,"

と言う場面がありました。

そのとき、生徒さんに「この文の意味が良く分からない」と言われてしまいました。「このレストランは、たくさんのお客に来てほしくなかったのか」と。

ああ、これはありがちな、"to expect" =「期待する」で覚えているために生じた混乱だな、と気付いた私は、以下のような問答をしました。
(すべて実際は英語で行われた会話を、適当に日本語に直したものです)

「常識的に考えてください。あなたがレストランの経営者だとして、お客さんにたくさん来て欲しいですか?」
「もちろん、たくさん来て欲しいです」
「でも、全く新しい小さなレストランで、あまり宣伝にお金をかけられないとしましょう。はじめからたくさんのお客さんが来ると思いますか?」
「ああ、そうだったら、あまり来ないでしょうね」
「そう、あまりたくさん来るとは思っていなかった。でもたくさん来てしまった。だから対応しきれなくなって、サービスの質が落ちた。つまり、"think something will happen" イコール "expect something to happen" ですよ」

"expect" =「期待」と覚えていると、とんでもないことになります。
なぜなら、「期待」はポジティブなものに対してするものだからです。
一方、"expect" は悪い状態を予想していた場合にも使えるのです。
"I expected to be late, but we actually arrived on time." (遅れるかと思ったけど、実はちゃんと予定通りに到着したよ)
"Hey, she was actually better-looking than I expected."(想像していたほどブスではなかったな)

この言葉をきちんと使いこなすためには、"expect" =「期待」よりも"think something will happen" = "expect something to happen" のような対応関係で理解した方がはるかに良いのです。

実は、先月、丸善本店の洋書売り場の横で、同じような内容の講演をしていた人がいました。通りかかったときに、その講師の人が「"wall" は『壁』ではない」と力説しているのが聞こえて(結局その場では何の解説もなかった)、一瞬「何を言っているんだろう」と思ったのですが、良く考えてみれば全くその通りです。

"wall" は家や部屋の「壁」に該当する場合もありますが、一方庭と庭との境目にある「塀」も "wall" と言います。ハドリアヌス帝がイギリスとスコットランドを分けるために用いた "Hadrian's Wall" は日本語で「ハドリアヌスの防壁」と訳されていますが、同様の機能を持つ "The Great Wall of China" は日本語では「万里の長城」となりますよね。
つまり "wall" = 「壁」と理解していたのでは、その全貌をつかめない、ということです。おそらく、その講師の人もそのようなことを言いたかったのではないでしょうか。

一々日本語に訳すことはある意味簡単です。しかし、それだと言葉の表面をなぞっただけで、あるいは一面を捉えただけで、なんとなく分かったような気になってしまいます。
一方、"wall" を英語のまま理解しよう、と思ったら、まずそれを実際に目にするか、想像するかをしなければなりません。"expect" のような抽象的な言葉であれば、より噛み砕いた英語の表現から自分で意味を模索しなければなりません。その結果、最終的に「ああ、『壁』のことだな」とか「つまり、『期待、予想』という意味だな」に行き着くことになるでしょう。でもこの過程がものすごく大事だと思うのです。

そして、たとえ初心者のレベルであっても、日本語の解説なしですべて英語だけで理解するように努力しながら英語を勉強すれば、この過程を経て真の実力が付くと言えるでしょう。

だから、私は(この間英文で書きましたが)生徒さんがすぐに電子辞書に頼るのは問題だと思います。生徒さんが例えばポロリと「怠け者」という日本語を口にした場合でも、すぐに該当する英語を教えてあげるのではなく、まずその人が絶対に分かるようなレベルの英語で、"Are you hard-working?" と聞き返し、"No, I'm not hard-working," という答えが返ってきてからはじめて "Then, you're lazy." と教えるように心がけています。時々面倒になってすぐに助け舟を出してしまうこともあるのですが。

翻訳や通訳の勉強をしているならいざ知らず、単に話せるようになりたいだけならば、できるだけ日本語に頼らないでやる、というのが正攻法であるな、と再び実感する今日この頃です。

posted by EnglishMaster at 23:55| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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