2006年04月14日

お酒のシーラカンス

前回はかなり固い話になってしまったので、柔らかめの話を一つ。

冗談半分でも生き字引(walking dictionary)のような渾名が付くと、どうしても皆さん私の語彙の限界を試したくなるみたいです。そして同僚に「君、この言葉も知ってる?」と聞かれたりするのです。

昨日もそんなできごとがありました。

仕事場に一時間ほど早く着いたところ、廊下で生徒さんにキャンセルされたP君(カナダ人)が暇そうに新聞を眺めていたので、「疲れた!」と彼の向かい側に腰を下ろしました。

以下、会話を日本語で再現すると、

P君:「今日は随分と早いね。どうしたの?」
私:「実は今日通訳(interpreter)の仕事があったんだけど、思ったより早く終わったの」
P君:「通訳?すごいね。でも君は僕よりボキャブラリがはるかにあるから有能なんだろうね」
私:「....」(疲れすぎて、気の利いた答えが出てこなかった)
P君:「でもね、この間、僕は君でも知らないような難しい言葉を発見したんだよ。周りに聞いても誰も知らなくてね、意外なことにA君だけ知っていたんだ」
私:「ふーん、そうなの?」
P君:「君も知らない、てことに千円、賭けても良いぜ」
私:「なあに?」
P君:「ちょっと待って、今出典を持ってくるから」

で、数十秒後に彼は雑誌 "The New Yorker" を持っていそいそと戻ってきました。

P君:「準備は良いかい?綴りはね c-o-e-l-a-c-a-n-t-h だよ」
私:「それって coalesce (癒着する)?」
P君:「うーん、ちょっと発音が違うね」
私:(これって書き言葉で人が口にすることを聞いたことがないけど、やっぱり発音を間違えたのかしら)
P君:「じゃあ、文脈なしで見せてあげよう」

そこで、彼は前後の言葉を指で覆って、その記事を私に見せてくれました。
その "coelacanth" という言葉を目で見た途端、かなり拍子抜けしてしまいました。

私:「なーんだ、それシーラカンス(see-la-kanth)じゃない。これが私も知らないだろう難しい言葉のつもりなの?」
P君:「え、知ってたの?」
私:「あの『生きている化石』(living fossil)って言われている魚でしょう?足みたいなのが生えている」
P君:「ああ、やっぱり知ってたのか」
私:「たしか中学校ぐらいで習ったよ。でもどうして The New Yorker にシーラカンスの話なんか出ているの?」
P君:「これ、アブシンスについての記事なんだ。緑の液体で、頭をおかしくするという理由で禁止されていたけど、今はセレブが一本何千ドルも出して入手しているんだって。だから『お酒のシーラカンス』(the coelacanth of drinks)と呼ばれているんだよ」
私:「アブシンス?ああ、アブサン(absinthe)ね。ヴェルレーヌなどが愛飲していたやつでしょう?」
P君:「....」

これにはさすがに彼も凹んでしまったみたいですね。
(ちなみに、これは少々意地悪な足の引っ張り方です。アブサンはフランス語の発音で、英語的発音ならアブシンスも可、なので)

でも、「絶対分からない言葉」と言われて「シーラカンス」はあんまりだ、と思いません?少なくとも日本人だと知っている人は結構たくさんいますよね。個人的には coalesce の方がはるかに難しいと思うのですが、どうでしょう。
(辞書を確認したら、発音はちゃんと合っていました (^^)v)

ちなみに、賭けても良い、と言われた肝心の千円ですが、請求しようとしたら「あれは単なる言葉のあやだよ」と逃げられてしまいました。
全くケチなんだから!
posted by EnglishMaster at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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