2006年03月31日

あなたの英語は、何色?

『ピカピカの英語力』で取り上げた某スクール広告の第二弾は:

「あれ、英語しゃべれたの?」
って驚かれるのは、かなりワクワク。
春はイメチェンの季節よね。

I can't wait to hear their surprise when they say,
"Oh, can you speak English?"
After all, spring is the time for makeovers, isn't it?

というものです。
電車の中などですでに目にされている方も多いかと思います。

最初これを見たときには、 "Oh, can you speak English?" だけでは驚きが十分に伝わらないからあまり良い訳だとは言えないな、と漠然と思ったのですが、やっと具体的にどこが腑に落ちなかったのかが分かりました。

論理飛躍が起きているのです。
しかも、オリジナルの日本語ではかろうじて一貫性が保たれている部分が、英語に直された途端にきれいさっぱりなくなってしまい、英語であるがゆえに一層目立ってしまっているのです。

と指摘したところで、もう一度英文を確認してください。
皆さんにはどこで論理飛躍が起きていると言えるか、分かりますか?


「驚く」のはどういう時でしょう。
何か知らなかったことを知らされたとき、または何かが思い違いだったと知らされたときですよね?
つまり、「英語がしゃべれるとは知らなかった」「英語がしゃべれるとは思わなかった」「確か、この間会った時はしゃべれなかったよね?」と言った時にはじめて、「驚き」のニュアンスを表現できるのです。日本語バージョンでは「英語をしゃべれたの?」と過去形にすることによって「知らなかった」⇒「驚いた」というニュアンスが上手く出ていますが、英語バージョンでは現在形のままの「英語をしゃべれるの?」になっています。
言うまでも無く「英語がしゃべれる」ことのみでは「驚く」こと(さらには「イメチェン」をすること)と全く論理必然的なつながりはありません。世の中には多少なりとも「英語がしゃべれる」人はたくさんいるのですから。
(「ら抜き」言葉を何回も連続して書くと微妙に気持ち悪くなってくるのは私だけでしょうか?)

さて、先ほど「英語であるがゆえに」と書きましたが、このように論理の飛躍があると、英語では一目瞭然です。
下手すれば「何を言おうとしているのかさっぱりわからない」つまり「伝わらない英語」になってしまう危険性さえ秘めているのです。

この広告のスクール、今は「100人、100色の英会話」を標榜しているみたいですが、この文章の色にあえて名前を付けるとしたら「『なんかよく分からないけど可愛いことを言う女の子の英語』色」になってしまいそうです。

もちろんそれもそれなりの魅力は(特に一部の男性にとっては)あると思うのですが、せっかくなので勝手ながら「『若くても説得力があり、仕事のできそうな女性の英語』色」バージョンも考えてみました。
ポイントは二つ。「あら、英語をしゃべれるの」を「そんなに英語が上手だったとは知らなかったわ!」という驚きを表す表現に変えたことと、全く関係の無い二つのアイデアを "after all" で無理やり結び付けるのをやめたことです。


I can't wait to hear the surprise in their voices when they say,
"I had no idea you could speak English so well!"
Isn't spring the perfect time of the year for makeovers?


皆さんはどちらが好みですか?
posted by EnglishMaster at 20:32| Comment(2) | TrackBack(1) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月26日

祝・優勝!&答え合わせ

すっかり遅くなってしまいましたが、日本チームはWBCで見事優勝し、初代王者(inaugural champions)となりましたね。
最初は批判的だったアメリカのマスコミでも、今はアメリカのホームラン重視の野球のやり方を見直すべきだ、という声さえ上がっています。

実は、今回王監督が標榜していた small baseball の精神、マイケル・クライトンの著書『ライジング・サン』の一節を思い出させるものがありました。
その話の中では日本通のベテラン刑事が後輩に日本のメーカーの "kaizen" の魂を解説するためにこう言います:
「アメリカ人はとりあえずホームランを打って、後はのんびりと休みたいんだ。日本人は一塁打ばかりを打ち続けて、決して休もうとは思わないね」
今の時代で必要とされているのは後者の考え方であることが、今回のWBCで証明されたのではないでしょうか。(それにしても某総務大臣をはじめ、未だにアメリカばかりを手本にし続けようという時代錯誤の方が多いのが残念ですが)

さて、大変お待たせしてしまいましたが、とりあえず今までの野球用語チャレンジの答え合わせです。

Baseball Challengeから
楽勝  a romp
二次予選 the second round
準決勝 the semifinals
(出場)枠 a berth
失点(もしくは打点) run(s)
守備イニング defensive inning(s)
先攻・後攻 visiting team/ home team
(準決勝に)進む to advance
盛り返す to rally
ゴロ a grounder
一塁打(もしくは一塁打を打つこと) a single/ to single
二塁打(もしくは二塁打を打つこと) a double/ to double
ここで名詞としても、動詞としても使われていることを読み取れましたか?

犠牲バント(を打つ) to sacrifice
屈服する to succumb

順番通りに出てきたので、なじみのない言葉でも比較的簡単に見つかったのではないでしょうか。

祝・決勝進出!から
inaugural championship
初代優勝者の栄誉。inaugural は形容詞、「最初の」や「開始の」という意味があります。ちなみに大統領の就任演説は inaugural address と呼ばれています。
late-inning homer
homer とは homerun の略語です。inning は「回」。late-inning とは遅めの回、つまり試合の終盤を指します。
benched 
これはベンチ入り。能動態であれば監督が主語で (Oh benched Fukudome) 受動態であれば選手が主語になります(Fukudome was benched)
shut down
ヒットを許さないこと。shut out という表現も使われます。
avenge their earlier losses
雪辱を果たす。to avenge は一般的に「復讐する」という意味で用いられます。

immortal
「不死の」若しくは「不朽の」という意味があります。
carve up
もともとは肉を切り分ける、という意味ですが、ここではむしろ「好きなように料理する」という感じで使われています。
legendary
伝説の。名詞形は legend です。王監督はすでにアメリカにおいても legend となっていましたよね。
dismantle
これも carve up と同じようなニュアンスで「解体する」という意味。相手を内部崩壊させたときに便利です。
dominant
優位を占めている、という意味です。to dominate、つまり「支配する」「威圧する」という動詞と併せて覚えておくと便利でしょう。
frightfully efficient
efficient は「効率が良い」という意味で、ぜひとも使えるようにしたい単語です。frightfully とは「恐ろしいほどに」。組み合わせると、アメリカのビッグスリーが日本の自動車メーカーを形容するのに用いそうな表現ですね。
make wind against s.o.
これは少し想像力が必要です。wind とは「風」。つまり「風を作る」=「空を切る」という感じになります。この記事では韓国の打者が上原の球に対して空を切るしかなかった、と言いたかったのでしょう。
lick its chops
chops とは場合によってあごやほお、口を指します。自分の口をなめる、ということはそう、舌なめずりをすることです。
fall for s.t.
これはワンフレーズで「〜に騙される」という意味です。I can't believe he fell for it, であれば「彼があんな嘘に引っかかるなんて」という感じになります。
一方、"fall for someone" であればちょっとニュアンスが変わって、「〜にほれ込む」という意味になります。"She's fallen for him pretty hard," であれば「彼女、相当彼に入れ込んじゃっているわね」ということに。
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2006年03月20日

祝・決勝進出!

WBCを取り上げた記事を紹介したばかりですが、日本が見事決勝進出を決めた(advanced to the finals)ため、せっかくなのでまた記事を紹介します。

国威(national pride)をかけた準決勝(semifinal)で宿敵(archrival)韓国に圧勝(crushed)した試合、エキサイティングでしたよね。
試合状況を思い出しながら記事を読むと、ああ、英語ではこういう表現を使うのだな、というのが色々と見えてくると思います。

記事を二つ紹介しますので、面白そうな方を選んで読んでみましょう。

最初の記事はWorld Baseball Classic 公式サイトの記事で、タイトルは "Third time's the charm for Japan" です。
これはどういう意味か想像できますよね。そう、「三度目の正直」です。

あと、ここで出てくる以下の表現はどういう意味なのでしょう。
inaugural championship
late-inning homer
benched
shut down
avenge their earlier losses


Major League Baseball のオフィシャルサイトの記事
では上原選手に焦点を絞ってあります。

ここで覚えておきたい言葉はすべて野球以外でも積極的に使われているものばかりです。

immortal
carve up
legendary
dismantle
dominant
frightfully efficient
make wind against s.o.
lick its chops
fall for s.t.

あとは優勝を願って応援するのみです!

posted by EnglishMaster at 14:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月18日

Baseball challenge

木曜日、最近のニュースについて語るというレッスンの中でメキシコがアメリカに勝ったという話題で生徒さんとひとしきり盛り上がった後、話はまたもや「疑惑の判定」(disputed call)を下した Davidson 審判(umpire)と日米戦に移りました。

そのとき、彼女は日本がサヨナラ負けしたことを説明したくて、9回裏(the bottom of the ninth)で攻めていたアメリカが日本にリードしたため、そこでスリーアウトを待たずして試合が終わったという風になかなか上手く説明したのですが、「これを英語でどういうのですか?」と聞かれた時にどうしてもその場で答えが出てこなかったのです。サルも木から落ちる、ということでしょうか。(次にいらっしゃる時までに手紙でフォローをしておかなければなりません)

ちなみに、「サヨナラ負け」に該当する英語はありません。「サヨナラ勝ち」にもっとも近いのが「決定打」を意味する "winning run"。でも日本語の「サヨナラ勝ち」にあるような、勝利をさらって走り去っていくような快感さにはちょっと欠けますね。

そこで思いついたベースボール・チャレンジ。
ホリエモンの起訴の時と同様、NYTの記事から出題しますので、興味のある方はhttp://www.nytimes.com/2006/03/17/sports/sportsspecial/17usa.html
にアクセスして参考にしてください。
これはアメリカがメキシコに敗れた試合を報じたものです。

では出題です。
以下の日本語を英語でどう言うか、もしくは記事の中でどう表現されているかを探し当ててください。

楽勝
二次予選
準決勝
(出場)枠
失点(もしくは打点)
守備イニング
先攻・後攻
(準決勝に)進む
盛り返す
ゴロ
一塁打(もしくは一塁打を打つこと)
二塁打(もしくは二塁打を打つこと)
犠牲バント(を打つ)
屈服する


最後になりますが、日本のマスコミでしきりに用いられている「タナボタ」、つまり「棚からぼたもち」についてです。英語では期せずして幸運がころがりんだ場合、"to fall/drop into [someone's] lap" と言います。棚から落ちてくる場合と、膝に直接落ちる場合とでは、なんとなく後者のほうが生々しい感じがしません?
posted by EnglishMaster at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

英訳の極意

先日、アメリカ人の友人に和文英訳を手伝って欲しい、と頼まれました。

どうせ直訳しても良いものができないから、単語の意味さえ教えてくれれば自分で勝手に書き直す、と言われたため、それなら簡単にできると思い、仕事が始まる前の5分くらいで携帯に転送された原文をみながら大体の意味を教えてあげました。

次の日、できたから見てくれ、と頼まれて原稿をメールで受け取ったのですが、どう見ても「これがネイティブ・スピーカーが書いたものだろうか?」と首を傾げさせられるようなぎこちないものだったのです。
いくつか改善できそうな点を指摘して、大いに喜んでもらえたのですが、その中の一文だけがどういじっても妙に入り組んで意味の分かりにくい、不自然な文章のままだったのです。

これは原文がかなり長く、複雑だったので仕方が無いのか、とあきらめかけていたところ、ふと原文を確認していないことに気づきました。そして携帯を取り出して原文をもう一度見たところ、途中で切れたものしかなかったにもかかわらず、それだけで問題点がすぐに分かりました。

日本語では文、または節の最も重要なポイントはその文乃至節の最後に来るのに対し、英語ではポイントが冒頭に来ます。彼は原文の内容を節単位で教えてもらい、それらの節を原文の順序どおりに並べて文章を作ろうとしたため、無理が生じてしまったのです。

これは日常会話レベルのわりあい単純な文章ではそれほど問題が起きません。
例えば、拙文で恐縮ですが、以前このブログで書いた『ボンド流の自己紹介』の一節を英訳してみましょう。

そして、連想したのが映画 『007』シリーズでおなじみのジェームズ・ボンドです。
彼も自己紹介の時には必ず苗字からスタートし、次にフル・ネームを言いますが、これは彼の「あくまでもフォーマルな関係を保ちたいので "Mr. Bond" と呼んでくれ」という意思表示です。そして、フル・ネームをその後に続けることによって混乱を避け、相手にファースト・ネームで呼びかけるきっかけも与えています。

This made me think of James Bond, the popular hero of the "007" movie series.
When he introduces himself, he also starts with his last name, then follows it up with his full name, but this is his way of saying "I want our relationship to remain formal, so I'd prefer to be called 'Mr. Bond.'" And by follwing that up with his full name, he avoids confusing the other person while at the same time providing an opportunity to perhaps use his first name (in the future).


細かいところは変えてありますが、カンマで区切られた節単位で見れば大体順番が対応していることが読み取れると思います。



これに対し、特に推敲を重ねた凝った文章であれば、違いが歴然としています。
(ちなみに冒頭に紹介した文章はコピーライターが書いたものだったのでかなり凝っていました)

そこで著作権を気にしなくて良い、格調高く複雑な文ということで、憲法の条文を見てみましょう。(ここで掲載しているのは公式の訳文です)

第33条 何人も現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ逮捕されない

Article 33. No person shall be apprehended except upon warrant issued by a competent judicial officer which specifies the offense with which the person is charged, unless he is apprehended, the offense being committed.


分かりやすいように対応する箇所を同じ色にしたのですが、大分順序が入れ替わっているのが分かりますよね?

ここでは極端な例として法令を挙げましたが、日常会話から一歩進んでプレゼンテーションやスピーチの原稿など複雑な英文を書こうという場合には、ただ思いつくままにフレーズをつなげて行けば良いのではなく、まず「何を伝えたいか」を考え、それを前に持ってきて強調するようにしなければ通じないのです。
例えば、この条文の場合には「令状逮捕の原則と例外」という主題が英文では冒頭にはっきりと打ち出されています。

もっとプロフェッショナルな英語をしゃべれるようになりたい、と考えるのであれば、是非英語に直す前に一旦要約する習慣をつけてみましょう。
posted by EnglishMaster at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月11日

Inlets and Outlets

先日、いつも働いているビルの一階に置いてある公衆電話の側を通ったとき、その隣に置いてあるテレホンカード販売機を見て思わず立ち止まってしまいました。

以下、写真です。

inlet.jpg

実は、最初にこの「紙幣挿入口」の下の "bill inlet" という表示が目に留まったとき、久々に面白い間違いを発見したな、と思ったのです。なぜなら "inlet" という言葉でまっさきに思い浮かぶのは地形の「入江」であり、「紙幣」と「入江」を組み合わせるとかなりちぐはぐなイメージになってしまうからです。「出口」を意味する "outlet" の反義語として適当に "inlet" を使ったのかな、とさえ思いました。

しかし、ひょっとしたら私の知らない用法であるだけかもしれないと思い、念のために辞書を調べてみました。すると、リーダーズ大英和辞典では
_n. 入江, 《島と島の間の》 小海峡; 入口, 引入口; はめ込み(物), 象眼物; はめ[押し]込むこと.
とあるではありませんか。

これなら "bill inlet" でもあながち間違いではないことになってしまいます。
なんとなく納得の行かない私は Merriam-Webster 英英辞典の大辞典版でも調べてみました。すると、
2b : a place of entrance : an opening by which entrance is made : ORIFICE ‹oil inlets› ‹air inlet› ‹inlet and outlet valves›

という定義が出てきました。

ここで出てくる例を見る限り、inlet は "oil" や "air" など「流体」と組み合わせて使われるらしいことが分かりますよね。この用法ならイメージ通りだな、と思いながらもう一つの英英辞典、電子辞書に収録されている Longman も念のために引いてみました。
こちらの方が明快で
2 the part of a machine through which liquid or gas flows in

と定義されていました。

やっぱりネイティブ・スピーカーから見れば不自然な用法なんだな、と思わず喜んでしまいました。
でも実際に使われているのかどうかというのも気になります。そこで、Googleで検索をかけてみたところ(ここまでくると単なる暇人のように思われてしまうかもしれませんが)ヒット数はたったの173件。"oil inlet" の 18,000 件に遠く及びません。
ただし、ヒットしたページがほぼすべて特許申請文書や自販機の製品紹介など専門的な内容のものが多かったため、業界ではこのフレーズが使われているのかな、という不安が残ります。

最後の手段として、同僚の中でもとりわけ語彙が豊富で言語感覚が優れている友人に「このような表示を見て不自然だと思ったんだけど、どう思う?」と聞いてみたところ、意味が分からないことは無いけど、なんとなく awkward (ぎこちない)だね、という返事が返ってきました。


さて、前述の通り Inlet は専ら「入江」として使われていますが、この 反義語に当たる Outlet は実に様々な場面で用いられています。そして、今まであまり意識したことは無かったのですが、考えてみると "inlet" と同様、ものごとの「流れ」というのがポイントになっているみたいです。

まず皆さんがよくご存知かもしれないのがブランド品を格安で買える「アウトレット・モール」の "outlet"。商品自体は流体ではありませんが、一種の販路であるため、商品の「流出口」という感じになるのです。
"I got this Anne Klein skirt for just $20 at an outlet in the suburbs," という風に使うことができます。
単に「小売店」"retail outlet" を指すこともあります。

あと、重要な用法としては「コンセント」でしょうか。
しばらく前に某英会話学校の広告で「コンセント」が和製英語であることを紹介するかなり気の利いたものがありましたが、全くその通りであり、コンセント自体は "plug", 差込口は "electrical outlet" もしくは " socket" と言ったりします。
I couldn't use my hair dryer in Europe because the plug didn't fit the outlets there.


面白い用法としては感情や衝動の「はけ口」があります。これらも形が無いものですから、覚えやすいですよね。
He found an outlet for his frustration in running.
(彼はランニングに欲求不満の捌け口を見出した)
posted by EnglishMaster at 22:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 和製英語? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月04日

書き言葉 vs. 話し言葉

文藝春秋の三月特別号に目を通していたところ、『賢い患者は日本語が上手』という対談形式の面白い記事を発見しました。

記事の趣旨にどこまで賛同できるのかどうかはさておき、私が最も興味を惹かれたのは日米では医者によるカルテ作成の過程が違う、という話でした。
すなわち、日本ではカルテを医者自身が書いているが、アメリカでは大抵医者がテープに口頭で吹き込んだ内容を秘書が文章に起こすというシステムを採っていること、さらにこの対談に登場している先生が自分の病院でこのシステムを採用しようと思ったところ、なかなか文章になるように喋れなくて苦労したことなどが書いてありました。

その先生は苦労した理由として日本語は「話し言葉と書き言葉のギャップが大きすぎる」ことに対し「英語ではほとんど同じ」であるから格段に楽だ、という意見を挙げられていたのですが、これにはいささか疑問を感じました。

なぜなら、ここで問題として取り上げられている「文章に起こせるような話し方」をしているかどうかは言語の特質よりもむしろその背後にある論理的思考能力や表現力の問題であると思うからです。
確かにアメリカの学校では小学校低学年からプレゼンテーションの真似事みたいなことがカリキュラムに組み込まれ、叙述的な表現力を鍛えらような機会が多いように思われますが、だからといって誰もが即座に「文章に起こせるような」理路整然とした話し方をしているわけではありません。英語圏の人でも文章力ゼロの方は多数いますし、最近はアメリカでも学校での作文のレベルが低下し、その結果として社会に出てからまともな英文のメールを書けない人が急増しているという問題は新聞でも取り上げられています。

また、表現力や思考力のレベルを離れて純粋にテクニカルな問題として捉える限り、一般的には英語でも書き言葉と話し言葉は大分違います。

まずもって(これは当然のことと言えますが)方言的な要素やスラングはいわゆるきちんとした文章からは一掃されています。なぜこれを敢えてここで指摘するのかと言うと、インターネット上で個人的に教える生徒を募集している友人から「時々『教えてください」という内容のメールに wanna とか gonna という表現をやたらと使いたがる人がいて不愉快だ」という話を聞かされたからです。
これは留学経験(駅前留学も含む?)のある人など自分の英語力に少なからず自信を持っておられる方に特に顕著な傾向みたいですが、wanna などは話し言葉限定、そして話し言葉の中でもいわゆる「タメ語」の領域のものであることには注意しましょう。
さらに、学術論文や非常に改まった文章では "it'll" "it's" "can't" 等の短縮形(contractions)は一切排除されています。すべて "it is" や "it will" などのように書き出されることが原則となっています。新聞でも "The Wall Street Journal", "The New York Times", "The Washington Post" 等のいわゆる「高級紙」ではコラムニストが読者に直接語りかけるオピニオン記事や誰かのコメントの引用以外には基本的に短縮形を見かけませんし、雑誌でも大衆向けの TIME は短縮形が多く、"The Economist" だと圧倒的に少なくなるような気がします。
(なので、手っ取り早く文章の「格」を上げたい場合には、短縮形を排除してしまえばいいのです)
使う語彙にも差があります。動詞一つをとっても砕けた話し言葉では簡単な動詞に色々な前置詞や副詞を組み合わせた句動詞が多用されるのに対し、書き言葉では単一のより難しい動詞が用いられることが多いです。(前者の例は "to get in touch with"。これに対応する後者の例は "to contact" です)

ただ、話し言葉と書き言葉の関係で日本語と大きく違うな、と感じる点がひとつだけあります。それは、英語では書き言葉のような話し方をしてもそれほど不自然ではない、ということです。
日本語では新聞や学術論文など「固い」文章はいわゆる「である調」で書かれていますよね。これをそのまま会話に転用してしまうと、なんとなく尊大な感じがしてしまいます。なので、文章の調子を柔らかくするために話し言葉のような書き言葉を使うようなことはあっても、コチコチの書き言葉をそのまま話し言葉として使うことは稀だと思います。

これに対し、英語圏では前述のような「固い」文章を読むことが多い人ほど、かなり書き言葉に近い話し方をするのです。すなわち、スラングを一切用いず、代わりに日常会話よりも文章で用いられることの多い語彙を操るのです。極端な場合には短縮形さえあまり使わない人もいます。そして書き言葉のような話し言葉を用いることはエリートの証でさえあるのです。

正式なビジネスの場ではなるべく書き言葉に近い英語を使うように心がければ、それだけで英語圏の人の評価は上がるはずです。せっかくコチコチの教科書英語を抜け出して話し言葉独特の表現を身に付けたからといって、それをむやみやたらと使うのは避けましょうね。
posted by EnglishMaster at 23:36| Comment(1) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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